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あぁ、私はあと何度この桜を見ることが出来るだろう。
あと何度この桜を見れば私は月神様にお会いすることが出来るのだろう。
あと何度…
「月神様…」
私はこの地を納める妖怪。
妖怪とは言えど、私は他の人とは違い半妖。
それでも私の力は普通の妖怪の倍以上はあった。
それには大きな理由がある。
人間と妖怪が共に生きている中で今までではあり得ない事が私の身体で起きたのだ。
祖母が人間で祖父が鬼の妖怪、そして母が鬼混じりの半妖で父が狐の妖怪だった。
つまり私は突然変異体、イレギュラーな存在なのだ。
そのせいで私は周りからいじめられたりする事もあっただろうと皆が予想するだろうが、寧ろ逆だった。
何故なら突然変異、イレギュラーに伴い私の身体にはある一つの特別変異があったからだ。
それが月神様の加護。
そのおかげで皆から丁重に扱われ、神として崇められ育った。
この地では月神様が絶対。
それに刃向かう者など誰一人存在しない。
つまり私が絶対と言うことを皆が信じていると言うことだ。
例え半妖でも、イレギュラーであっても。
私にとっては良いことなのだろうが、私はそうは思わなかった。
私には自由が無いからだ。
いや、自由と言うものを知らない。
いつも街に出ても拝まれ母親や父親、そして祖母や祖父の顔を見る機会が少なく学校?と言うものさえも知らない。
友達とはなにかを好きとは、恋人とはどんなものなのかを知らなかった。
人の手の温もりも、愛も何もかもを知らない。
知る余地すら無いのだから。
だって私は囚われた月なのだから…
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