第1章

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マンションまで迎えに行くよ? 昨日涼さんからのメッセージ この前と同じ12時。 私はエントランスの前で涼さんを待つ。 今日はお泊まりセットもちゃんと準備して、 荷物が大きくなっちゃってる。 あの日見た夜明け 今日も見れるかな… 明日か… 時間通りにマンションの前に涼さんの車が停まる。 私はどんな顔をしていいのか解らずに。 でも、 小走りに近づいて。 いつものように運転席を降りて助手席のドアを開けてくれる。 険しい顔ではない。 私だけが知ってる、 あの優しい顔。 「お会いしたかったです…」 そう言って運転席を見ると、 目尻を少し下げて、 嬉しそうに肯く。 「そんなに素敵な優しいお顔なのに、 どうしていつも険しい顔をなさっているの…?」 素朴な疑問。 うーん… ちょっと考えて、 「店を始めた頃は笹本と同じようなテンションで、 店の子たちには機嫌良く仕事をしてもらおうと、 褒めてみたり話を聞いたりしてたんだよ。 だけど、 そうしてると段々と女の子は我が儘になってね? 開店前に勉強に行ってた店ではオーナーはほとんど顔は出さずに、 怖い存在だった事に気付いた。 怖い存在… そう言う人が居なきゃ、 我が儘放題になってしまうって、 気付いたんだよ。 もともとそんなに開けっ広げな性格じゃないし、 こうやってる方が俺に合ってる。 自然と統率が取れるようになってね… 結果、 俺はあんな存在になってる。 店の中でも、街の人たちの間でも…」
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