カゲロウの夏

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破った絵を、ゴミ箱の方に捨てて、五畳ほどしかない部屋の真ん中で横になる。 窓から覗く月の光が、夕凪を淡く照らす。 すると、床に転がっていた携帯が、ポップな着信音とともに震える。 何事かと夕凪は起き上がり、携帯を開いて画面を見る。 【新着メール 1件】 「……?」 メールなんて久しぶりだ。と思いながらメールを開く、 どうやら送ってきたのは、妹のようだ。 『お兄。お盆参りやるから帰って来たし』 「……来たし?」 文法間違えてないか? 我が妹ながら、恐ろしいと思う。 文面から見るに、お盆参りだから実家に帰ってこいと言うのだろう。 まぁ誰でも何と無くそう察するだろう。 しかし夕凪は一人暮らしになってから、実家に帰ったことがない。 今更帰って来て、何とかなるのか心配だった。 「……気分転換、だと思えば気楽かねぇ」 今は絵を描くことにスランプを感じている。 気分転換となれば、もしかしたら絵を描く意欲がそそられるだろう。 そう確信して、夕凪はメールを返信した。 『了解。明日戻る』
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