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7 #2
あの男は、女の狡さまで熟知してて、どこまでも狡猾。
百戦錬磨の高等技術の前に、私はなす術がない。
どうして、あんな男と出会ってしまったんだろう…
今更ながらに思う。
接点の無かった岸谷と私が出会う確率なんて、どれだけのものか。
ましてや仕事で再会だなんて…
偶然か? 必然か? それとも運命か?
そんな乙女チックな妄想なんて、こんな歳だと乗っかれない。
現実は厳しくて、三十路過ぎれば、打算と妥協を兼ね備えて保守的。
だから、得体の知れない年下男を避けようと必死。
でも、抗いきれない何かが作用しているように、幾度となく岸谷に引き寄せられて。
私はどこかで諦めに似た覚悟をしていた。
いずれ、あの男に壊されるだろうと。
そして、予感は当たる。
しかし…それは、思い描いていたものとは全くかけ離れた形で。
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