10 #2

1/14
1316人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ

10 #2

「俺は、本当に……辛いのに気丈に振る舞うお前の姿を見ると堪らなくなるんだ…」 辛そうな顔をしているのは課長の方だ。 信号が青に変わり、課長はその表情を隠すように顔を逸らし、車を発進させた。 「課長…聞いてもいいですか…?」 恐る恐る尋ねる。 「ああ…何だ?」 「離婚を……」 「離婚?」 「離婚をしたのは……私のせい、ですか」 「え?」 課長は目を見開いて私を一瞬だけ見て、慌てて前へと向き直った。 ハンドルをギュッと握り、私へ問い返す。 「それ、どういう意味だ?」 「奥さんが…私と課長の仲を疑ってたって…」 「ハアー…ちょっと、待て」 大きな溜息を吐き出し、課長は車を路肩に寄せて停車した。 カチ、カチ、カチというハザードランプの音が、やけに耳につく。 ・
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!