1316人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
10 #2
「俺は、本当に……辛いのに気丈に振る舞うお前の姿を見ると堪らなくなるんだ…」
辛そうな顔をしているのは課長の方だ。
信号が青に変わり、課長はその表情を隠すように顔を逸らし、車を発進させた。
「課長…聞いてもいいですか…?」
恐る恐る尋ねる。
「ああ…何だ?」
「離婚を……」
「離婚?」
「離婚をしたのは……私のせい、ですか」
「え?」
課長は目を見開いて私を一瞬だけ見て、慌てて前へと向き直った。
ハンドルをギュッと握り、私へ問い返す。
「それ、どういう意味だ?」
「奥さんが…私と課長の仲を疑ってたって…」
「ハアー…ちょっと、待て」
大きな溜息を吐き出し、課長は車を路肩に寄せて停車した。
カチ、カチ、カチというハザードランプの音が、やけに耳につく。
・
最初のコメントを投稿しよう!