瞳の中で

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とりとめのない事を考えていると遠目に啓太らしき人の姿が見えた。俺は、反射的に手を振ろうとして動きを止める、…後ろから誰かが啓太を呼び止めたみたいだ。見たところあれはベルリバティの制服。…教え子かもしれない。遠くからでも分かる、二人の親しげな様子が。思わずそのまま窓を閉めたくなる衝動をこらえながら、啓太がこちらへ来るのを待っていると、ようやく二人の会話が終わったようで、ゆっくり啓太が俺の車に近づいてきた。 「ごめん。お待たせっ!」 弾んだ声に胸が苦しくなる。 「……遅かったな」 自分でもびっくりするほど冷たい声が出た。啓太は苦笑して後頭部を掻いてもう一度ごめん、と言ってから話を続けた。 「思ったより仕事が長引いちゃってさ、今日は生徒の落とし物一緒に探してたんだ」 「落とし物?…そんなの、他の奴に任せればいいだろ」 「…そんな訳にはいかないよ。だって俺、先生なんだから…それに、ちょっとぐらい生徒の為に動きたいんだ」 「フーン」 面白くない。そうして誰に対しても優しくして、誰にでも微笑みかけるんだろうか。俺以外のやつに…。 「和希?」 不意に横で声がした。いつの間にか啓太は助手席に座っていて、シートベルトを装着したまま怪訝そうにこちらを見ている。
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