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「ギャアアアアアア!!」
何処かで聴こえる断末魔。
ソレは余りにか細く貧弱で、用水路に流れ込む汚水が如き人の群には聴こえない。
幾ら彼等が人々に問い掛けようとも返答は期待できず、只々拷問の様な苦痛が身体を蝕んでゆく。
幾千幾万もの蟻に体を覆われ食まれてゆく中、己を無下に扱う通行人等に澱んだ恨みと憤怒の心が迸る。
恨めしい。
何故アナタ達は私を見てはくれないのだ?
妬ましい。
何故こうも貴方達は私とかけ離れているのだ?
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいぃ!!」
誰も気づかぬ極小の命。
知らずに通過し、知らずに踏み、知らずに潰し、知らずに殺し、知らずに恨まれ、知らずに呪われる。
私達は知らない。
彼等が断末魔を上げていることを。
私達は知る由も無い。
私達の中に『彼等』が紛れ込んでいることを。
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