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そんなあたしに離すことを諦めたのか、渉はあたしの背中にそっと手を添えた。
「今、なんつった?」
「……」
さっきは勢いで言ったけれど、こうやって改めて訊かれると、恥ずかしくて答えられない。
「好き、って聞こえたんだけど。これって、夢?」
「え」
夢?
まさか渉の口からそんな言葉が飛び出してくるなんて思わなくて、思わずぷっと吹き出してしまった。
その瞬間あたしの腕の力も緩んで、渉はその隙にあたしをパッと引き離すと、そのままあたしの顔を覗き込んできた。
「もっかい言って?」
「え」
「もっかい、好き、って言って?」
もう一度言うなんて凄く恥ずかしいんだけれど、目の前の渉を見ていたら、今ここで自分の気持ちをちゃんと言わなきゃならないような気がした。
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