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聞こえない振りをして、始まった授業に集中しようと努力しました。
けれど、机の上に座ってノートを隠されてしまっては、黒板の文字を書き取る事も出来ません。
「……退いてください」
彼女にしか聞こえないくらい小さな声で言った。
けれど、それは彼女を喜ばす事にしかならなかった様です。
『やっぱり!お兄さんはあたしの声聞こえるのね!ねぇ、遊びましょ?』
はぁ……ノートの上で跳ねないで貰えると有りがたいんですけどね……
取り合えずまた無視をしましたが、あまり建設的とは言えません。
一度声をかけてしまったばかりに、それはほとんど意味を成さなくなっていたんですから。
自業自得ですけどね。
『お兄さん、なんで今度は無視するの?ねぇ遊んで?』
私の手に重ねられる小さな手が冷たくて、体で教科書やノートを隠されるので何も出来なくて、無意味に時間だけが進んでいきました。
早く……早く帰りたい。
「如月くん……体調悪いの?」
「いえ、大丈夫です」
隣の席の女の子から、控えめに掛けられた声に、曖昧に微笑みながら首を横に振りました。
『お兄さんどうして?どうして、その子には返事するのに、あたしの事は無視するの?』
頭が痛い。
これは、体調が悪いといって保健室に行った方が良かったかも知れないですね。
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