第1章

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次の日 いつもより早い時間にホームに着いた 君がいつも歌っている場所 まだ、君は来ていない 「気付くかな?」 その場所に昨日買ったのど飴を置いて柱裏のベンチに座る 「何やってんだ…俺」 …ん? 待て待て、冷静に考えろ 誰が置いたかわからない飴を食べるか? 食わねぇよな 気味悪いし 「取り戻しに…っ!?」 急いでベンチから立ち上がると、俺が置いた飴をジィーッと見つめる君の姿が 「やべっ!」 とっさに柱に隠れる 遅かった… うわー、どうする? 「あー、くそっ」 置かなきゃよかった けど、もしかしたら無視するかもしれない 誰が置いたか分かんないんだし、手ぇ付けないかも… 飴に手を付けてない事を願い、柱裏から様子を確認する 「…っ!?」 柱裏から顔を出したら、ちょうど君と目が合った うわ、最悪だ タイミング悪ッ とっさに柱に隠れるとクスッと小さな笑い声が聞こえた気がした それとほぼ同時に5時を知らせる鐘が鳴る ──リリーン、リリーン── 小さな笑い声は余韻を残すことなく鐘の音に飲み込まれた カタッ 君がギターケースを開ける音がした 茜色のホーム 5時ちょうどに君は音を奏でる ♪~♪~♪~ 視界の片隅に写ったアナタ 気付けば、 いつの間にか目で追い掛けていた 茜色ホーム 初めてアナタを見たとき 少しダルそうなその横顔に ため息を吐いたその横顔に 恋をした この想いを歌に乗せて アナタの元へ 届いたら伝えるの 2文字の愛言葉 アナタが “好き” ♪~♪~♪~ いつも聴いてる曲と違う曲 初めて聴いた ギターの余韻がなくなるとホームはいつものように雑音が入り混ざる
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