哀しき王族

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寒い。寒い。 お父様は…お母様は…お兄様は.... 何処に居るんだろう。 恐怖政治を行っていたお父様も家族には優しかった。 秘書の裏切りさえ無ければ今頃…。 自分の格好が目に入った。 なんて汚い寝間着姿なんだろう。 柄にもなく地を這いずって屋敷から逃げたせいで裾は解れ、少し雪が降っているせいで汚れていた。 これからどうなるんだろ。 何も食べる物がないせいで犬のように餓死するのか。 それとも、平民に見つかり撲殺か。 運がよければ何処かの貴族が保護してくれるかもしれない。 裸足で歩く歩道は冷たかった。 捨てられたセーターの上で寝ている小汚い猫を見つけると迷いもなく手を差し出した。 「小汚い。が、僕に抱かれる事を許可しよう。暖を取れ。」 言わずもがな猫は知らんぷりを決め込む。 この伸ばされた手はどうすればいい。
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