花の守護

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「お届けものです」  朗らかな男の声に、母が宅配でも頼んでたのかもな、と藤倉昭人はすぐに自分の部屋を出て、錆びついた古いマンションの玄関扉を開ける。  隙間から見えた男は白いTシャツに黒のジーンズ姿で、ラッピングされていない植物の鉢を抱えている。  プレゼントにしては変だし、花を頼むような趣味はなかったよな、とは思いながらもドアチェーンをはずした。 「じゃあ、適当に置いてください」  昭人は自分が脱ぎちらかした学校指定の靴をどけながら言うと、男はなぜか玄関へ上がりこみ、後ろ手に扉をしめた。 「配達じゃなくてすみません。ちょっとお願いがありまして」 「はあ」  言われた意味がわからずに、昭人は無遠慮に相手を見た。  細面で頼りなさそうだが、Tシャツはまるでアイロンがけをしたように、ぴしりと整っている。  まるで、育ちのいいどこかのご子息が屋敷を抜け出してきました、と言わんばかりの清潔感だ。  さらに人を疑ったこともないような表情で、嬉しそうに微笑んでいる。 「私は連城広希といいます。この子は『浄火』。まだ咲いてないけど赤いハイビスカスだよ」  いきなり名乗られても花の説明をされても、何がなんだかわからない。 「で、何の用ですか」
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