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こんな早い時間のバーには、
お客などいない。
話題は尽きずに、あるはずなのに、
意識して一般的な話題を探す。
つとめて日常の話題で、
饒舌になる自分。
笑顔で聞いている懐かしい人。
このまま、青い瞳に吸い込まれそうに
なるのを必死で拒む。
でも、なんて温かい、
陽だまりのような時間なのだろう。
あくせくした日常からは想像もできない。
9.現実
でも、私は日常に
もどらなければならない。
私の日常は忙しいのだ。
家族の朝食を作り、
送りだし後片付け、
仕事に出かけ、
帰ってからも忙しい。
現にいまだって
洗濯物を出しっぱなし。
カクテルを一杯飲んだだけで、
私の決めたタイムリミット。
このホテルは夫の会社にも近い。
ハンスさんの会社にも近い。
「あ、奥さん」っていつ、
夫の同僚が現れるか。
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