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……借金の返済が終われば、そこで仕事もきっと終わる。
借金は早く無くしたいのに、なくなってしまうと爽との繋がりまで切れてしまう気がしてた。
それでも俺は望を早く助けないといけないと思う気持ちから、その封筒を受け取った。
「ねえ爽。俺、今日海が見たい」
少しでも一緒に居たくて、俺はわざと都心を離れたがった。
「ああ、いいよ」
気付いているのかいないのか、爽はあっさり了承した。
爽の話は相変わらず面白い。今日は、少しだけ仕事の話を聞かせてくれた。
少しずつ心を許してくれているのが解かるだけで、俺の心は満たされた。
爽は俺に望の話をする。望を心配して、好いてくれているのは嬉しい。俺だって、望を誰よりも大切に思っている。
それなのに俺の胸の内には、汚い想いが燻っている。
望は、爽に想われているのにそれに気付いてない。
それを望に伝えて笑顔を作ってあげるのが俺の役目。爽を初めに好きになったのは望だ。……望が爽を好きにならなかったら、きっと俺は爽と出会っていなかった。
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