3

8/9
169人が本棚に入れています
本棚に追加
/72ページ
 ……借金の返済が終われば、そこで仕事もきっと終わる。  借金は早く無くしたいのに、なくなってしまうと爽との繋がりまで切れてしまう気がしてた。  それでも俺は望を早く助けないといけないと思う気持ちから、その封筒を受け取った。 「ねえ爽。俺、今日海が見たい」  少しでも一緒に居たくて、俺はわざと都心を離れたがった。 「ああ、いいよ」  気付いているのかいないのか、爽はあっさり了承した。  爽の話は相変わらず面白い。今日は、少しだけ仕事の話を聞かせてくれた。  少しずつ心を許してくれているのが解かるだけで、俺の心は満たされた。  爽は俺に望の話をする。望を心配して、好いてくれているのは嬉しい。俺だって、望を誰よりも大切に思っている。  それなのに俺の胸の内には、汚い想いが燻っている。  望は、爽に想われているのにそれに気付いてない。  それを望に伝えて笑顔を作ってあげるのが俺の役目。爽を初めに好きになったのは望だ。……望が爽を好きにならなかったら、きっと俺は爽と出会っていなかった。  
/72ページ

最初のコメントを投稿しよう!