第1章

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遅い もう店に出てる時間じゃないか? 待ってた。 あの、タケシという男からの電話を。 仕事の予定を極力明日以降に変更して、 ラピスの事務所でパソコンを開いて画面を睨んでる。 昨日、 あれからしばらくは震えが止まらなかった。 マリアのあんな話を聞いて、 とても平常では居られなかったこともあるが、 あの男は泣いてた… 大粒の涙が、 俯いた顔から落ちるのを見たんだ… どんなことが… マリアは俺の手をすぐに見つけた。 見られないように気をつけていたけど、 食事をするときにはもう、 青みが濃くなって、とても隠し通せる傷ではなかった。 「どうしたの? その傷!」 マリアは俺の手を取り、 そっと包んだ 「痛い…?」 「大丈夫だ。 通りで暴れてる酔っぱらいが居たからね… ちょっと威嚇のつもりで電柱を殴った。 気にしないで?」 無茶しないで… そう言いながら冷えたタオルハンカチで手を覆ってくれて。 「うん。 マリアが待ってるからね? 無茶はしない 」 マリアに気づかれないように、 心配させないように、 嘘をついた…
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