プロローグ

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以下の光景を想像してみてほしい。 青空の下、満面の笑顔で草原を駆け抜ける少女。 それを幸せそうな表情で追いかける少年。 二人は子犬のように追いかけあい、じゃれあい、楽しげに笑う。何とも幸せそうな光景だと思わないだろうか。 それを踏まえて、俺は現状を再確認した。 深夜の暗闇を切り裂くように失踪しながら背後を振り返る。奇遇なことに俺も追い掛けっこの最中だった。相手の呼び声を背中に感じながら、俺は決して相手に追いつかれないよう全力で夜道を駆け抜ける。 比類なき全力疾走を続ける俺に、追い手が後ろから声をかけてきた。それは少女からの親しげな声ではなくーー 「待たんかいこのクソガキィィィィィ!」 「今日こそ借金返してもらうからなァ!」 ーー耳をつんざくような胴間声。 「だーくそ! しつっけえなアイツら!」 恐喝寸前の怒鳴り声に舌打ちしつつ、俺は追っ手ーー借金取りのヤクザ二人を振り切るべく路地裏へと突っ込んだ。ポリバケツを蹴飛ばし、室外機に足をぶつけながらも足だけは動かし続ける。あんな連中に捕まったらシャレにならない。最悪内臓抜かれて売り飛ばされるかもしれん。 「待てやコラぁ!」 「早よ諦めて腎臓と肺よこせや!」 そらみろ。捕まった瞬間人生バッドエンド一直線だ。 というかそもそも、高校二年にして借金取りに追い回されている時点でだいぶひどい人生だと思う。俺以上に哀れな高校二年生はそうそういまい。
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