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目が覚めた。
ゆっくりと、身を起こす。周りには誰もいない。
耳元に訪れる音はといえば、鈴を鳴らすような虫の音色だけ。
こびりつくようなあの囁き声はやってこない。
「……」
僕は額に手を当てて、深く息を吐いた。
口はカラカラに渇き、何か飲まないことには寝なおすことすら無理そうだ。
体を起こす。水を求めて、立ち上がる。
「……また」
魔界に閉じ込められて、何かに延々囁かれ続ける夢。
「……嫌な夢だ」
漏れ出た呟きは誰に拾われることもなく、風にさらわれていった。
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