第十九話 『どうして愛しい日々を忘れてしまっていたのだろう』

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そんな力也を見てすぐに分かった。 力也は彼女に恋していると――……。 口では俺の好きな人が彼女だと言ってはいたが、それは力也の方の間違いなのではないかとさえ思った。 申し訳ないけど、俺は彼女と会っても記憶を取り戻すどころか、いつも感じる頭痛さえ起きなかったのだから。 「それじゃ私達はこれで」 「お邪魔しました」 あれから母さんも交えて話題は尽きることなく繰り広げられ、気付けば夕方になっていた。 玄関先で力也とふたり、ふたりを見送ったものの、どうしても気になってしまうのは桧山さんだった。 今日はいつもと様子が違った。 いつも通りに笑っているようだったけれど、心ここに在らず状態で、ずっと上の空で。 そして少しだけ悲しそうにも見えた。 様子がおかしいことに気付いていながらも、みんなの手前声を掛けることが出来ず、結局帰って行ってしまった。 なにかあったのだろうか……?それとも悩み? みんなとの会話を楽しみながらも、そんなことばかり考えては、何度も桧山さんの様子を窺ってしまっていた。 「帰っちゃったな」 ふと投げ掛けられた言葉に我に返る。 その声に力也を見れば、名残惜しそうに玄関を見つめていた。
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