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「あれ……?母さんは?」
ついさっきまで一緒に桧山さん達を見送っていたのに。
もしかしてキッチンか?でも物音がしない。
周囲を見回していると、力也は大きな溜息を漏らした。
「なに言ってるんだよ、おばさんならついさっき買い物に行ってくるって言って出て行っただろ?……翔も分かったって返事してたじゃねぇか」
「そう……だったな」
やべ。全然覚えていない。しかも返事したとかあり得ないんだけど。
「……なに?もしかしてなにか思い出したのか!?」
期待の眼差しを向けてくる力也には悪いけど、何ひとつとして思い出せていない。
「いや。……せっかくセッテイングしてもらっておいて悪いんだけど、全然……」
「そっか……」
明らかに落胆する力也に申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまった。
だけどこればかりは仕方ない。
本当に思い出せていないのだから。
「まっ、焦らず気長にいこうぜ」
重たい空気を入れ替えるように明るく言い、リビングへと向かっていく力也。
その後をついていくものの、さっきから違和感を拭いきれない。
力也はまるで自宅のようにソファーに腰を下ろし、テレビをつけた。
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