第十九話 『どうして愛しい日々を忘れてしまっていたのだろう』

7/19
694人が本棚に入れています
本棚に追加
/426ページ
力也の話は、信じられないことばかりだった。 力也と同じように、俺がいつも高木さんを目で追っていたこと。 そして力也の問いかけに、俺が自分で高木さんが好きだと伝えたこと。 力也が嘘をついているようには思えない。ってことは、きっと真実なのだろう。 でもどこかで腑に落ちない自分がいるのは、桧山さんの存在があるから? 混乱する頭。 だけど力也が俺に頭を下げ、謝り出したのを機にその混乱もどこかへ飛んでいってしまった。 「俺……ずっと後悔してたんだ。なんであの時、自分の本当の気持ちを翔に伝えなかったんだろうって」 力也……。 顔を上げ、今にも泣きそうな顔をして力也は何度も「ごめん」と呟いた。 「力也、謝らないでくれよ」 「――え?」 正直、真実を知った今でも俺自身が高木さんを好きだったということが、信じられないんだ。 「悪いけど俺……どうしても高木さんを好きになったとは思えないし。……それにさ、例え俺が高木さんを好きだったとしても、今度は正々堂々とライバルとして頑張れるだろ?……だから謝るな」 「翔……」
/426ページ

最初のコメントを投稿しよう!