4.まるで少年のように

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展望台まで上がると、色とりどりの光を散りばめた絶景が広がる。 譲はこの商業ビルの建設に当たって設計案に関わったという。 プレオープンは明日で、一足さきにコンサルタントの特権でわたしを連れてきてくれた。 二月の終わり、春をまえにまだ風は冷たいけれど爽やかにも感じる。 胸の高さまである手すりから少し顔を出して一望した。 「寒くないか」 「平気よ。それより譲、すごくきれい。うっとりしちゃう」 「だろう。ワインでもあったら最高ってとこだな。寒さもしのげるし」 「ほんと。そういうサービスは考えなかった?」 「手すりだけだし、酔っぱらって乗り越えて、挙げ句の果てに落ちてもらったら困る。ガラス越しじゃなくて、風を感じながらってとこが自然ぽくていいだろう?」
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