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ショートケーキを一口。
口の中に広がるクリームが妙に甘ったるくて、頬に涙が伝う。
「泣かないで桃花…あんな男のために」
小夜子は、視線を上げられずにいる私を切なげに見る。
「違うの…自分が情けないの。本当に淋しい時に手を差し伸べてくれなかったら、それは愛じゃない。分かってたのに、抜け出そうとしなかった自分が情けないの…」
「桃花…」
「私、馬鹿な女だね。小夜子だって呆れてるでしょ?」
流れ落ちる涙を手で拭い、顔を上げた瞬間
「呆れる訳ない…呆れる訳ないじゃん!」
小夜子は私の体を引き寄せ、ギュッと抱きしめた。
「さ、小夜子?」
「…私なら、ずっと側にいてあげる」
「え?…」
「来年も再来年も、ずっとケーキ一緒に食べてあげる。…桃花が好き。桃花じゃないとダメなの。桃花は…私じゃダメ?」
躊躇いを捨て、心の奥底から絞り出すような声。私を抱きしめる小夜子の背中が、小さく震えている。
小夜子が…私を好き?
射抜かれたように、胸がきゅんと痛くなる。
この感覚は…この前と同じ…
胸が熱い…体が…
そうか、私も小夜子を…
側にいて抱きしめて欲しいのは…
「私も好き…小夜子が」
唇が震えた。
「桃花…キス、していい?」
耳もとに掛かる声。
私は小さく頷いて、はにかんだ笑みを向けた。
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