第5章

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「あぁ、こないだの」 「こんばんは」 クシャ、と笑うと中性的な顔立ちに 可愛らしさを覗かせる。 アオキサン、そっくりなんだな 青木君のお父さん、とされる人物がオレの事を知ってると聞いたって まだ、親子だと確定したワケではないが 改めてそう思った。 「お仕事帰りですか?」 アオキサンによく似た微笑みを披露しながら尋ねられ 「ええ」 毛並みを逆撫でされる感を押さえて頷いた。 だからと言って 何も話す事などなく早々に切り上げようとして 「遅い時間ですから気をつけて」 頭を下げた。 「有り難うございます 父と一緒ですので、大丈夫です。 お兄さんこそ、気をつけて」 耳を疑ったワケじゃなかったが 引っかかるフレーズに思わず上げた視線で 目の前の青木君をガン見して その奥、後ろのコンビニから出てきた背の高い男に 視線を移し 絶望する。 もう大昔の事だと思ってたのに。 黒い点の瞬き。 繁殖力の強いソレはあっという間に いっぱいいっぱいまで拡がっていく。 あの頃より少しだけ歳をとったアオキサン 本当にアオキサンだったんだな、と また、改めて思った。
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