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ぱっと目が覚める。
大きくなったオレとアロイスのラブラブ姿を想像していたら、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
隣を見ると、一緒に寝ていたはずのアロイスがいなくなっていた。
心配になって探しにいく。
リビングに向かうと、ソファーに座ったルーンが、頭を抱えて溜め息をついていた。
「おまえの父ちゃん、悪い病気なのか?」
凄く悩んでいるように見えるルーンに聞く。
「ミツキ様……。いえ、父はただの風邪で、なんの心配もありませんよ」
「なんで分かるんだよ」
「私は、見えるんです」
ルーンの言ったことに、心臓がバクバクしだす。
見えるって、まさか……
「ゆ、幽霊が見えるのか?」
大嫌いなルーンだけど、怖さに耐えきれずに腕を掴んでしまう。
「違いますよ。私は、体の悪い部分や、その方が強く願っていること、例えば、その方が想っている相手などが分かるんです」
「それ、超能力ってやつか?」
「そうですね。でも、見たくないものも見えてしまうので、それほどよい力ではないですよ」
凄い力を持つルーンをちょっと尊敬しながら見ると、苦笑いして目を伏せた。
「あのさ、アロイスの好きな相手も分かるのか?」
ドキドキしながら聞いてみる。
「残念ながら、アロイス様の心だけは見えないんです」
アロイスは本当はオレと結婚したいと思っている、とルーンが言うのを待っていたのに、そんな答えでずっこけてしまう。
「なんだよ、使えないやつ」
「申し訳ありません」
深々と頭を下げて謝ってくるルーンにぷいっと背中を向けて、アロイスを探しにいく。
アロイスはどこにもいなくて、仕方なくベッドに戻る。
すると、そこにアロイスはいた。
「アロイス、どこに行ってたんだよ」
アロイスの胸をポカポカ叩いて怒る。
「腹の具合が悪くて、トイレにこもっていたんだ。寂しい思いをさせてごめんな」
「腹は治ったのか?」
「あぁ」
「じゃあ、許してやる」
アロイスが辛い思いをするのが、一番嫌だ。
だから、アロイスの腹を撫でてやりながら、また一緒に横になる。
「明日もルーンはいるのか?」
「いや、今夜だけだ」
「じゃあ、明日からはふたりだけの新婚生活だな」
アロイスの胸にほっぺたを擦り付けて、喜びを表す。
また、アロイスは子供扱いして頭を撫でてきたけど、明日からのことが楽しみなので許してやる。
早く大きくなって、アロイスと結婚するぞ!
《終》
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