7793人が本棚に入れています
本棚に追加
/448ページ
「この本、濡れてます」
静かな図書館の中で、無機質な声が響いた。
感情を一切感じさせない表情で見上げられる。
その顔立ちがなまじ整っているだけに、余計に冷たく感じた。
「カビの原因になるので、弁償してもらうことがあります。その時は連絡差し上げますから」
え?
弁償?たったこのくらいで?
…性格きついな。
確かに少しだけ湿ってしまった。
だけど飲み物をこぼしたとか、雨で濡れたとかそこまではない。
バッグの中に、一緒に冷えたペットボトルのお茶を入れていたのだ。その外側の水滴で湿っただけだ。
「わかりました…」
一応そう答えるが内心面白くはない。
「以後気をつけてください」
その人はそう言うと、用は済んだとばかりにもう俺を見ることはなかった。
感じわる…
最初のコメントを投稿しよう!