城戸優太

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「この本、濡れてます」 静かな図書館の中で、無機質な声が響いた。 感情を一切感じさせない表情で見上げられる。 その顔立ちがなまじ整っているだけに、余計に冷たく感じた。 「カビの原因になるので、弁償してもらうことがあります。その時は連絡差し上げますから」 え? 弁償?たったこのくらいで? …性格きついな。 確かに少しだけ湿ってしまった。 だけど飲み物をこぼしたとか、雨で濡れたとかそこまではない。 バッグの中に、一緒に冷えたペットボトルのお茶を入れていたのだ。その外側の水滴で湿っただけだ。 「わかりました…」 一応そう答えるが内心面白くはない。 「以後気をつけてください」 その人はそう言うと、用は済んだとばかりにもう俺を見ることはなかった。 感じわる…
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