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「ちょっと待ってて」
薫さんが奥に消えてバスタオルを持って戻ってきた。
「これ使ってて。すぐに出てくるから」
「ごゆっくりどうぞ」
タオルを受け取って、薫さんが洗面所の奥に入るのを見守る。
姿が見えなくなると自分の体をざっと拭いた。
薫さんと同じ。
タオルはふわふわとして、優しい清潔な香りと、それからほんのちょっとお日様の匂いがした。
「おじゃまします…」
部屋の中は相変わらず物が少なくて殺風景なほどさっぱりしている。
中に入るためにざっと拭いただけで、まだまだびしょ濡れの俺は、その辺に腰掛けることも出来ずに、所在なく突っ立っていた。
ふと見ると寝室のドアが開いていたので、何とはなしに中をチラッと覗いてみる。
あ…
イルカのぬいぐるみがベッドの中にいるのに気づいた。
…もしかして、あれから毎日抱いて寝てた?
近づいてイルカを抱き上げる。
「お前はいいなぁ」
薫さんと一緒に寝れるなんて。
つぶやきを漏らしながらその鼻をつつく。
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