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彼女が講義室に姿を現すと、明らかに空気が変わった。
スラリと長い手足。
白桃のように柔らかそうな白い肌。
サラサラの栗色の長い髪。
身長は高い。170センチは超えているだろう。
琥珀のような、茶色い瞳は生まれつきらしい。
スッと高い鼻筋も、少し尖った顎も、外国の血が混じっていることを想像させる。
「あれって」
「木村紗羅(きむらさら)だ。今日は出席か。珍しい」
講義室のあちらこちら、男の子達も女の子達も、紗羅を見ながら囁く。
そんな遠慮のない視線なんか慣れたもので、紗羅は気にする素振りもなく真っ直ぐに私の隣の席に腰を下ろした。
「おはよう、菜々子」
「……おはよう、紗羅」
トッズの大きなバックからテキストを取り出す綺麗な手。
指先はフレンチネイル。
ラベンダー色のブラウスに白のデニム、パールのネックレスとピアス。
全然派手じゃないのに、今日も沙羅は完璧に美しい。
「凄いね。みんなこっち見てるよ」
「そう?私ってそんな有名人?」
ふふ、と、沙羅が私を見て微笑んだ。
紗羅は自分が人目を惹くのを知っていて、こんな風に受け流す。
中高一貫の女子校で、一緒だった沙羅。
外部の大学を受験するって私が言ったら、同じ大学を受験するって言ったのは、沙羅の方だった。
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