あたしの百合ゲラー

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同姓である私を好きだからという意味合いだけで、要は百合とユリをかけているだけらしい。おっさん芸人か貴様は。 だが桜は単にそんな痛い女なだけではない。 『好きな相手に近づくと強烈な眠気に襲われて、その場で熟睡してしまう』 とか、もはや奇病としか言いようのない症状の持ち主なのだ。 鼻さえ摘んでいれば私との距離を縮められるとか言うが、たまにそれすらも忘れてこうして暴走する。 桜は私の体臭が原因ではないと言い張るのだが、わからないだけ余計に失礼な話しだ。 にわかには信じがたいが、実際にこうして私に対してのみ発動、否、発症するのだから信じる以外にどうしようもない。 桜はアルバイトとして私の身の回りの世話や雑用係をしている。 所謂パシリとも言うが、いくら安くて便利とはいえ、私は自らこんな危険物を所持した覚えは無いったら無い。 「さて、今日こそが…最後だ。」 私は足元に転がる幼児体型に向かって合掌すると、ドアノブに手をかけた。
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