夜の街で嘲う

5/6
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
息を切らし肩で呼吸をしながらベッドの上に身体を沈める。 ふと女を見る。 無我夢中で果実を貪ったせいか、果実のものではないモノがベットリとその果実を支配していた。 まるで打ち捨てられた人形のように 力無く横たわる女。 その姿は、今にも写真に収めてしまいたいと思うほど妖艶であった。 しばらくの間その美しい姿を目に焼き付けていると 女がゆっくりと首だけをこちらに向けてきた。 「……お金……置いて、って……」 その言葉に、急に現実に戻される。 お金など、本当は五……つまりは、五万ほどしか持っていない。 食らうことに夢中になって現実などすっかり忘れてしまった。 「……」 打開策を考え、すぐにある考えが思いつく もう一度『して』しまえばいい。 そうすれば女への金をごまかして逃げても 女に追い掛ける体力など無くなっているはずだ。 そう考えて女の上に乗り 再び自身を沈めようとすると 女が信じられない動きで素早く腕を奮った。 喉元に、ひんやりとした固いものが宛がわれる。 女がこの数時間で一瞬たりとも見せなかった、歪んだ笑みを浮かべる。 女が喉元に宛がったモノをヒラヒラと見せ付ける。 小さなナイフだ。 何故そんなものが……行為の間、そんな物騒なものは目にしてなかったのだが…… 「残念ね、女側が疲れてるからって食い逃げができるとでも思ったの?」 再びピタリとナイフが喉元に宛がわれる。 背筋を伝う、いやな汗。 「……甘いわね」 女に頬を殴られる。鈍い音と共に伝わる激痛。 両手で押さえて痛みを堪えていたその隙を狙われたのか、 意識が一瞬にして失われた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!