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(なかなか雨は止まないな。いつまで俺たちはここで足止めされるのか……)
リナト村を離れて数日後。2人の姿は一軒の山小屋の中にあった。
目的地であるアルダの首都、インエタンセルを目指してやって来たがここ、ラルゴス山の麓で足止めされていた。
原因はここ数日間ずっと降り続いている雨だ。
この雨により自分たちが越えようとしているラルゴス山の山道の彼方此方で土砂崩れが発生しているのだ。
自分たちだけではない。カズヤがため息を出しながら振り返ると、自分たちと同じ、ここで足止めされている旅人たちがこの山小屋の中でひしめいている。
彼らから聞こえる会話は同じ内容ばかりで、遠回りするか、雨が止むまで待つかの話ばかりだ。
遠回りは安全なルートだが山道を行くルートの数倍の日数がかかってしまう。
雨を待って山道を行くルートは近道になるが、いつ雨が止むのか、たとえ雨が止んだとしても、安全に山道を行けるのか。話は堂々回り、いつまで経っても結論が出ない有様だ。
山小屋はここ数日間であっという間に宿屋と化して人がすし詰め状態。あまりの人の多さに山小屋の小屋番は、先にいた者から宿を出て行くようにと勧告が出されてしまった。
そして今日もまた数組、旅人たちが宿を追い出されるように出て行く。
そして彼らに2人も例外ではない。この山小屋に来て、3日目になろうとしており、彼らがここに来てからもどんどん人の数は増えていく。
おそらくもうすぐ自分たちの番、そろそろ決断すべき時か。カズヤはエヴァに決断を求める為に山小屋の中を探し出し始めた。
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