大逃亡

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「嘘だ!!」 頭の中で、月山薫が言った言葉を処理した瞬間、即座に口が動いた。 「は!?なんで、嘘なんだよ」 「だ、だって…俺、男だし」 「はぁ?お前だって、男の俺が好きなんだろうがよ」 「それは…でも、あんたは江波さんが好きだったし!」 「過去だろ、過去形。今は違う」 「でも、俺の事、ウザがってたじゃん。だから俺、離れようと…」 そう言った俺に、月山は、ばつが悪そうな顔をした。 「あれは…」 「もう会えないって言っても、あんた、何も言わなかっただろ」 「あれは…諦めようとしてたんだ。お前の事」 諦めようとしてた? 俺を? 「なんで…?」 「お前なぁ、人生これからっていう若い奴を、俺の勝手な気持ちだけで、人生を踏み外させるわけにいかねえだろ」 人生を踏み外させるって、そんなの…。 「そんなの、俺は望んでない」 そう言った俺を、月山薫は冷静な大人の表情で見た。 「そうだとしてもだ、ガキの恋愛じゃねえんだ。勢いだけで突っ走る訳にもいかねえだろ」 「そんなの、本当に好きなら我慢出来るはずないだろ」 そう言った俺に、月山薫は、優しい笑みを浮かべた。
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