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城間 清吾は、愛知県の片田舎の漁師の長男として、大正10年(1921年)に生を受けた。
ひなびた村ゆえ、半農半漁。
収穫は、殆ど村で消費されていた。
清吾は尋常小学校より村始まって以来の秀才と呼び声高く、高等小学校の担任田村は高等学校の入学を、強く勧めた。
しかし、父親の清次は
「漁師の倅が、学校行って学者様にでもなるんかい?」
「漁師はな、魚さえ獲れたら良いんだ」
そう言って、全く取り合わなかった。
では、せめて仕事の終わった後に清吾を託して欲しいと田村が嘆願し、清吾も勉強したいと言うので、仕方なく清次も折れた。
それからは、清吾は田村の好意で漁を終え、畑仕事の終わった後に特別に授業を受けると云う。
田村は、常々清吾に
「これからの時代は、頭です」
「色々な知識を持った人が、生きていけるのです」と
「英語も知らないと、色々な国とは仲良く出来無いですからね」
そう言って、日常会話が話せるよう教え、色々な本も貸し与えた。
清吾は、早朝からの漁に出て昼からは、畑仕事と薪割りをこなした後、夜遅く迄田村から借りた本を読み漁った。
清次は、そんな清吾を苦々しく見ていたが、漁も畑もこなしていたので、黙ってはいてくれた。
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