第八章 決着

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膝をついたのは何時振りだったか。 入学後に師に楯突いて半殺しにされた時以来だろうか。 こみ上げる吐き気を堪えるが、それ以上は身体が言うことを訊かない。 《雷骨拳》に付加された麻痺効果が回避行動を妨げる。 「《限定強化・脚部》」 「....カッ!?」 《限定強化》の重ね掛けで強化された脚で、膝をつくアズナの垂れた頭を蹴り上げる。 先の腹部への一撃に続いての強撃に、アズナの意識が飛びかける。 確かな手ごたえを感じた。勝機はここだ。 浮き上がったアズナの無防備な身体に手をかざし、唱える。 「《エレメンタル・ボックス>」 数えるのも馬鹿らしくなる程の魔法陣がアズナの身体を包み込む。 各属性の魔法陣が幾重にも重ねられ、やがてアズナが見えなくなるほど密集した箱型魔法陣へと形成された。 「理論も何もない、ただ魔法陣をいたずらに重ねた品の欠片もない力技。 魔法と呼ぶのもおこがましい駄作だが....威力だけは申し分ない」 魔法陣が光り輝き魔力の奔流が結界内全体に渦巻く。 「素晴らしい身体能力を得たが...得て理解したよ。トレースとは言えリッチと私の身体能力に差がありすぎて上手く制御できなかった。そう都合良くはいかないらしい」 そう語りかけながら鬼ヶ島の城壁へと歩くレイ。 城壁に手を触れると人一人分の大きさの穴が開き、そこからレイは城外へと出る。 「それを耐えれば今度こそ君の勝ちだ。私の2勝目か、君の29勝目か」 城壁の穴が完全に閉じると同時に、城内に大爆発が起こった。
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