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「私、今まで、友達に優しいとか、天使みたいだとか、言われたことなんて一度もないよ……? 」
自分が、多少整った容姿を持っていることなんて知っている。
だから、悠李に好かれるように最大限にそのイメージを利用させて貰ったけれど。
もう一度窓の外に目をやると、丁度、悠李が一番でゴールする所だった。
『美玖が…好きなの。 女同士だけど、そういう意味で…… 』
昨日、抱き締められながら、耳元で苦しげに囁かれた言葉。
「今日は私も好きって言ってあげるから、……ね 」
堕ちてきたからには、絶対に離してあげない。
あまい毒の入った林檎は、一緒にかじってあげるから。
見上げると、青い空に真白な月が浮かんでいる。
ねぇ、悠李ちゃん、お月さまは昼間も見てるのよ……?
誰にも聞かれないようにそう呟くと、美玖は悠李には決して見せない顔でクスリ……と笑った。
《 おわり 》
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