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それと同時に、嫌悪や悲しみといった感情が、食堂内で静かに増幅する。
…………、やっぱり。
あの頃と変わらない様子に、内心ため息をこぼした。
だけど…………。
「っな、なに?なんかあったの?!」
突然の騒ぎに、ボクはビクッと体を揺らして、不安げに瞳を揺らした。
男子しかいないはずなのにキーキーと耳に痛い悲鳴は、まるで殺人事件でも起きたかのようだ。
だけど……。
不安でいっぱいなふりをしつつも、ボクは内心眉を潜めた。
あの子たちの様子も、周りの反応もあの頃と変わらないけど、なにかがおかしい。
あの頃と比べて、負の感情が増えているのは、まぁ当たり前のことだからいいとして……。
この違和感はなんだろう。
彼等を呼ぶ声、誉める言葉、下心満載の不快な言葉。
雄叫びはまだいいとしても、耳に痛い悲鳴…………。
あ、そうか。
悲鳴が減ったんだ。
あの頃は、耳に痛いだなんてそんな生易しいものじゃなかった。
耳を塞いでいないと耳鳴りがして、ひどいときはしばらく耳が使い物にならなくなるくらい、すごかったんだ。
それなのに今は、耳を塞がなくても問題ないくらい、悲鳴が小さくなっている。
なんでだろう。
あの子たちの声と、周りの叫び声からして、全員揃ってないみたいだけどそれは関係ないはず。
だって見てないからはっきりとはわからないけど、少なくとも三人にいるんだから。
彼等の親衛隊がおとなしくなるなんてあり得ない。
キョロキョロと周りを見渡していると、横から舌打ちが降ってきた。
「チッ……。おら、さっさと食って出るぞ」
「え……?」
不安げな表情で顔を上げれば、ものすごく機嫌の悪い同室者の彼と目が合った。
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