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その顔に、彼の気持ちが手に取るようにわかって思わず笑いそうになる。
だけどここで笑ったらすべてが台無しになっちゃうから、なんとか堪える。
「えっと、でも……」
さっさと食えと目で訴えてくる彼に、ボクは戸惑ったように口を開いた。
「向こうで、何かあったみたいだよ?」
「だからさっさと食え」
「え……」
ボクをせっつきながら、うどんの入っていた小皿と箸を回収して自分のトレイにのせる同室者。
彼はよっぽどここにいたくないみたいだ。
まぁ、その気持ちは吐きそうなほどよくわかるけどね。
とりあえず、困惑気味な表情を張り付けたまま、なんとかゼリーを流し込んでいく。
すると、食べ終わったらしい子犬くんがおずおずと口を開いた。
「あ、朝輝くん。あのね……。この騒ぎは、別になにかが起きた訳じゃないから、心配しなくても大丈夫なんだけど、……いや、起きてるといえば起きてるのかな?」
う~ん、と首を傾げる子犬くんの横では、チャラ男が残りのご飯をすごい早さで掻き込んでいる。
「とにかく、事件とかじゃないから大丈夫。それでね、これが一番大切なことなんだけど、この騒ぎ、毎日起きるんだ」
「……?」
真剣な顔で言う子犬くんに、ボクは口をモグモグさせながら首を傾げた。
「この学園はちょっと特殊でね、生徒会の方々がすごく人気で…………なんていうか、アイドルみたいに人気で、ファンクラブがあるんだよ。生徒会の方々以外にもファンクラブ持ちの人はいるんだけど、生徒会が一番規模が大きいんだ」
「で、その生徒会の行く先々で、ファンが興奮して叫びまくるってわけっス」
いつの間にか食べ終わったらしいチャラ男が、イスの背凭れに寄り掛かりながら言う。
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