第5章 押花の散歩

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「あ、でも私、甘いのも苦いのも、どっちも好き。だから部室でのお菓子、減らしたりしないでよ?」 「ははっ、欲張り。そんな事しねぇよ」  立花君が、笑った。 初めて、笑った顏を見た。 「……何、変な顔して」 「今、笑ったよね?」  かちゃん、とカップを置いた立花君は大きな手で口元を隠して。 「わ、笑ってない」 「隠せてないし。あは、なんかレアなとこ見ちゃった。ラッキー?」  何回か言われた、ラッキー、の仕返しもしてみた。 すると立花君は、ずるっ、とだらしなく椅子に座って、もう一度笑ったような気がした。 けれどそれは苦笑いというやつで。 「……角煮丼、食わね? 気になるし」  また誤魔化した、と思ったけれど、私は、食べる、と言ってまた笑ったのだった。 【第六話『雛の花冠』につづく】
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