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「あ、でも私、甘いのも苦いのも、どっちも好き。だから部室でのお菓子、減らしたりしないでよ?」
「ははっ、欲張り。そんな事しねぇよ」
立花君が、笑った。
初めて、笑った顏を見た。
「……何、変な顔して」
「今、笑ったよね?」
かちゃん、とカップを置いた立花君は大きな手で口元を隠して。
「わ、笑ってない」
「隠せてないし。あは、なんかレアなとこ見ちゃった。ラッキー?」
何回か言われた、ラッキー、の仕返しもしてみた。
すると立花君は、ずるっ、とだらしなく椅子に座って、もう一度笑ったような気がした。
けれどそれは苦笑いというやつで。
「……角煮丼、食わね? 気になるし」
また誤魔化した、と思ったけれど、私は、食べる、と言ってまた笑ったのだった。
【第六話『雛の花冠』につづく】
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