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「華、どうしたのさ?」
「えー?」
「大丈夫?帰る?あんた、グラス割りそう」
たまにお手伝いに来ているバーで
あたしがこの度めでたく本格的に
バイトを始めて二週間。
時間はオープンの夕方五時から
十時までのきっかり五時間。
「何かあった?」
「いや、ただの睡眠不足、か、な?」
そもそも。
バイトなんて
許してもらえないかと思っていた
誰にって?
そりゃあ、もちろん
あの、狡猾で腹の色は闇より黒い
マスター三神に、だ。
そのマスター三神と一緒に住まう事になって、はや三週間と二日
あたしの精神状態は
まるで、涅槃を極める仏様のようだ
いや、あたしのような穢れた人間が例えるに値しない高貴なお方なのは分かっています。
……申し訳ありません、心の中でお詫びを入れる。
だけど
この煩悩撲滅運動はいったいぜんたい
いつまで続くんだろうか……
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