序章

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「まってよ。お兄ちゃん……」  はじめての学校。赤いランドセルを背負った少女は、さきに行ってしまう速足の兄を捕まえた。なにもかもがはじめての生活に挑むのに、置いて行かれては敵わなかった。  兄の腕にすがりつくと、四つ年上の彼は笑った。 「しょうがないなぁ」  そういって苦笑いする彼の髪が、風で揺れる。生まれつき色素の薄いその髪は、日の光に照らされると輝いて見えた。幼い妹は、そのあたたかい髪色が大好きだった。 「最初のうちは、手、繋いでやる。放すなよ?」
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