はじまり

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「風が…気持ちいいな」 公立、初瀬高等学校の正門の前で呟く。 黒い学ランに身を包み、右手には真新しいバッグを抱えた俺、赤山秀一は気持ちの良い一日の始まりを感じていた。 自転車をこいで数十分ではあるが、その軽い運動で温められた体にそよ風が気持ちよい。 今日は入学式ということもあり、期待に胸が躍っているのだ。 …といっても、俺の学年は二年なので、自分の入学式というわけではない。 「ねえ、早く行ってよ」 「…へい」 後ろからかけられる怒ったような声に、俺は素直に従い自転車を押す。声の主は自転車の後ろに乗った赤山海(アカヤマウミ)。 正真正銘、俺の妹だ。 そう、今日の入学式は俺の妹が参加するものであり、これから共に同じ学校に通うのであった。 自転車のカゴは別の荷物でいっぱいになっているため、手に持っているのも妹のカバン。 どうして俺がここまでしなくちゃいけないのかと思っているのだが、親から言われたのでしょうがなくやって上げているのだ。 なのにこの妹、感謝どころか差し図までしやがる。 まあ、今日くらいはゆるしてやるけどさ。 「じゃ、新入生は取りあえず体育館に集合らしいから、迷わずいくんだぞ」 自転車を所定の位置に止めると、妹は礼すら言わずに去っていった。 「礼くらい言えよ…なんなんだよアイツ」 去っていった妹に毒づきながらも、校舎内に入り自分の新クラスである2年Gクラスへと向かう。 「お、秀一おはよーっす!」 「おはようサンコンさん」 「誰だよそれっ!? 俺の名前は神楽政利(カグラマサトシ)だぞ!?」 登校早々にツッコミを入れてくるのは、一年からクラスが同じな政利だ。
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