はじまり

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「今日ってさ、入学式じゃん」 「うんまあそうだな。そういえば秀一って妹さんもここに入るんだったよな? もしかして今日の入学式に参加するのか?」 「不幸なことに、もしかしなくても参加する」 「なんで不幸なんだよ。兄妹そろって同じ高校とかいいじゃん! 俺兄妹いないから、そういうの憧れるんだよね!」 「そんないいもんじゃねぇよ、妹なんて。家にいるときなんか、だらしねぇし女の本性を見てしまうんだぞ。 ま、お前にもいづれ妹が出来た時に分かるさ」 「いや出来ねぇよ…。いづれとか言ってるけど、高校生にもなって妹が出来る希望なんて一切ないからな…」 政利は放っておいて、俺は自分の席についてカバンの中のものを引き出しに入れた。 「そっかー、今日って秀一の妹さんが入学するんだー、へー」 座ったのもつかの間、後ろから奇妙なつぶやきが聞こえる。 俺に言ってるんだろうな。 「ちょっと、何で無視すんのよ」 つぶやきに反応しなかったのが悪かったのか、背後の人物は少々不機嫌な様子だ。 どうも気が滅入ることは連続で起こるらしい。 面倒ではあるが、顔だけ後ろに向けて相手をしてあげる。 「いちいちお前のつぶやきなんかに答えてられるかっての。 用があるなら名前呼んで千円払え」 「なんであんたと話すだけでお金払わなくちゃいけないのっ!? なによその態度、何様よー」 もうやだめんどくさい。 ツーサイドアップの茶の髪を揺らし、立ち上がった彼女は俺の前の席に座りなおす。 おい、そこは別の人の席だろうが。 「で、さっきの話なんだけど、秀一の妹さんが入学するんでしょ? 中学校違ったから、最後に見たのは小学校だったっけ。 楽しみ、楽しみ」 ニヤニヤと笑いながら、俺の机の上にある消しゴムをいじる。 「こらやめろ芽衣。勝手に人のもん使うんじゃねぇよ」 「別にいいじゃん消しゴムくらい。それよりさ、体育館にいったらちゃんと教えてよ。わかんないかもしれないし」 なんで妹をお前に教えなきゃなんねぇんだよ。 古い付き合いとはいえ、幼馴染である江間川芽衣(エマガワメイ)はなれなれしく俺に関わる人物だった。
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