毒舌彼氏

にーい

「俺さ、恋人って呼べる人が出来るの初めてなんだよ」

繋いだ手を見るのも恥ずかしい俺に、瀬戸くんがこんなことを言ってきた。

「そ、そうなんだ」

じゃあ、俺が瀬戸くんのハジメテの人なんだ――って思って嬉しいことは嬉しいけど今の状況が恥ずかしすぎてリアクションが取れません。

「だから、イマイチよく分からなんだな。こう、距離感ってやつとか」

「う、うん」

きっと、瀬戸くんを好きになった女の子はいたと思うんだ。ただ、瀬戸くんの中身まで見抜けなかった。だから怖がって告白できなかったんだと思う。

でも、瀬戸くんが好きになった子はいなかったんじゃないのかな。だって、そういう感情を抜きにして接してくれるから、瀬戸大地っていう人間は成り立っているんだと感じるし。

「実際どうなのよって朝倉に訊いたらさ……『今は恋人いないけど、好きなヤツはいるんだ』って言われてな」

「へ、へえ……そうなんだ」

瀬戸くんが相談を持ち掛けて朝倉くんが暴露したわけだ。