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五十嵐さんは通りからあたしの姿を隠すように、頭を抱き寄せて撫でてくれる。
「俺が行ってやろうか?」
「え?」
「瑠璃ちゃんがどうしても会いたくないなら、俺が預かって、代わりに倫世さんに返してあげても」
「……それは駄目だよ」
きゅ、と五十嵐さんのスーツの裾を掴む。
彼はクスッとくぐもった笑いを漏らした。
「言うと思った」
耳元で放たれる低い声に、思わず身体が震えた。
寒いせいじゃない。
「じゃあ、俺、ついて行ってもいい?」
「え?」
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