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「おわったよ~」
雅さんが尻尾を巻いて逃げてからしばらくして、サオリさんに声をかけられた。
ぼくが連れられて着いた場所は、喫茶ステーション。
ドアベルを鳴らして店内に入ると、サオリさんは迷わず、カウンターへいく。
何度かこの店に来たことはあるが、いつもソファ席で、カウンターに座るのははじめてだ。
「マスター、こちらが笹本くん」
マスター、と呼ばれたひとは、髭をはやしている。
その風貌から、年配だと勝手に思い込んでいたが、こうしてあらためて見ると、わりと若いようだ。
「きみが、笹本くんなんだ、たまに店に来てくれるよね」
「…はい、ときどき利用させてもらってます」
「で、笹本くん、こちらが相澤先生の彼氏さん」
「え?」
サオリさんが、相澤さんの彼氏と言ったのは、マスターだった。
「どうも、マユミがいつもお世話になっています」
「あ、いえいえ、こちらがいつもお世話になってます」
しどろもどろ、こたえる。
んーー、てことは?
「笹本くん、相澤先生の相談にのってあげたんでしょう?」
サオリさんが、説明をしてくれる。
…あのラブホの?相手が?
マスター!
「ここで三人で話してたことがあるのよ、笹本くんのおかげだって、冗談で、ご利益あるのかも、とか」
…そんな些細な話が、
「ウワサになるとはねー」
…まったくです。
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