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実を結ばない愛の行為は、
ただの欲の吐き出しなのかもしれない。
しかし、形が残らなくても、
欲にまかせた行為だとしても、
幸の体温を、キスを、荒い息を、
この身で感じることの喜びを、
恋情と言わずなんと言うのか。
ひとはギャップに弱いという。
それならば、関係の落差(というか高度というか)から考えれば、この状態は、心理上、仕方のないことだ。
「雅さん…」
甘い声に、身体がざわつく。
侵入してくる快感に、現実が、とおのく。
おこなうごとに、
ほしくなってしまう。
それは、どうしようもないことだ。
首筋、背中、臍の下、
指先も舌先も
どうしようもなく幸の全てを求めている。
ただ、溺れすぎなんじゃないかと、自分に不安を感じることもある。
もう三十路だし、もう少し冷静さがあったほうがいいんじゃないのか。
引き締まった筋肉がなめらかで、ふくらはぎなんて、唐揚げにしたら美味しそうだとか、考えるあたり発想が危険すぎる。
「幸、なに考えてる?」
問いかけに返ってきた答えは、
「…もうすこし激しくしても雅さん平気かなって」
そんなこと考えてたのかよ!
さらりと大胆なことを言い放つなんて、恐ろしいやつだ。
でも、たしかに、口には出せない要求。
…まだ、もっと。
冷静さは棚上げで、幸の色香に酔いしれた。
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