東風吹かば

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特にすることもなく、救護室で救急ガイドブックをパラパラめくる。 もうお昼も近いのに、二人は帰ってこないし…… 雨の音がした。 二人とも傘を持って行ったかな? 悩んだけれど、傘を持って前川邸を飛び出した。 傘を開きながら飛び出して、門のすぐ外に人がいるのに気付かなかった。 ぶつかって傘を落とした。 「すみません!大丈夫ですか!」 「…………あ……」 女の人が赤い傘を落とした。 儚そうな美人…… 「浪士組のお方どすか?」 傘を拾って渡すと、困ったような笑みを浮かべた。 「はい。皆今大坂へ行ってまして。何か御用ですか?」 女の人は懐から帳面を出して 「借金返済の催促に来たんやけど……」 借金返済! どうしよう……河合さんも居ないし 「あの……それって、今日中じゃないと駄目ですか?」 女の人は子首をかしげて 「うーん。駄目と言えば駄目やけど……」 「今日中は無理です……どうしたらいいですか?」 女の人は笑って 「どないしよ。何か形になるもんでも貰っとこかな……」 えー! そんなもの何にもないよ!! 私はお金もないし、刀だって折れてないし…… 「あんた可愛い顔してるはるから、貰っとこか?」 「え?…………えー!!」 もしかして!借金の形に身売り!! 「嫌です!他のにしてください!!!」 女の人が急に吹き出した。 「あはは。おもろい子やな~」
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