314人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
ベルトカップルは、友人知人から事前に薦されたカップルから、投票を行って決める、らしい。
そんなものがいつ推薦されて、投票されていたのか、当人であるおれたちはその瞬間まで知らなかった。
広場に近づくと、スタッフらしき学生に、こちらです!と誘導されるがまま、ステージに連れていかれた。
ステージ上には、上位のベストカップルたちが集まっている。
その中に北村教授も混ざっているところをみると、この人が推薦者なんだろう。
「よっ、ご両人!」
観覧者も、教授の悪ふざけを楽しんでいるようだ。
「余計なことしゃべってないでしょうね」
冷笑をうかべて、幸は教授のとなりに立つ。
「せっかくの笹本くんの弱みだ、そう簡単に公にはしないさ」
北村教授は事も無げにそう言った。
そして、おれを見て、
「お楽しみのところ悪かったね」
と言葉を足す。
…幸、偉いな、こんな人のもとで勉強してるとは。
タイムスケジュールが押しているようで、インタビューとかはなかった。
三万円分の食事券を受け取り、一言!と司会者に求められたので、
「あたたかく見守ってください」
とコメントした。
なにが楽しいのか、みんな大盛り上がりだった。
ステージからはける途中で、キスコールがおこる。
幸はおれの前を歩いてた。
不機嫌な顔のまま、幸は振り返ると、おれの後頭部に手をそえる。
眼鏡にあたらないように顔を傾けて、おれの下唇を食むようにキスをした。
会場がしん、とする。
「これで満足?」
誰に言ったのか、聞こえるはずもない会場に向かって幸は言うと、ステージからおりた。
おれも慌ててついていく。
一拍遅れて、会場に笑いがおこった。
最初のコメントを投稿しよう!