ひとつめ

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私のこともだいぶ知って、もうそういう遊びやめたとなることもなく、上谷さんは店にくる。 毎日ではないけど、1週間に一度はくる。 とてもあやしい人なのだけど、その行動はあやしくは見えない。 普通に服を見て、私の手があくと声をかけてくる。 こういう人は女の子のお客様にたまにいる。 お客様にもなるのだけど、暇潰しなのかお話にくる人。 女の子のお客様は私よりもバイトの子を目当てにしている。 ファンとかいう意味不明なものになっているらしい。 上谷さんも私のファンということでバイトに見られている。 同性なら警戒せずに友達にもなれるのに、異性はナンパにしかならない不思議。 ただ、最初よりも私も上谷さんに慣れてきてしまった。 別に待ち伏せもしないし、電話番号押しつけてきたりもしないし、体さわってくるようなこともないし。 本当、女の子のファンみたいにお話にくるだけ。 きっと暇潰しなんだろう。 私が休憩でいない間にきて、休憩あがって戻るとバイトの子とも話している。 そのままバイトの子と友達にでもなんでもなって、彼女にでもなってもらえばいいのに、私にも声をかけてくる。 …微妙な嫉妬もある。 ショップほど個人の売上考えることもないけど、バイトの子に顧客をとられたような。 だから、私は余計に上谷さんを私の友人としては見ないように考える。 休憩あがって、届いていた入荷した荷物を見る。 バイトの子が検品はしてくれている。 あとは陳列するだけ。 できるだけ売り出したいものだから、目立つところに置こうと思って、軽く什器の配置をかえていく。 そんな大きくは力仕事になるから動かせないけど、ハンガーで吊るしていた場所を棚にかえたり。 レイアウトは私の仕事。 「静葵さん、手伝う。これ、そこにはめればいい?」 上谷さんはまるでバイトのように動いてくれる。 せっかくだから手伝ってもらった。 棚にする板も重いと言えば重い。 服を乗せたまま動かしたいところだけど、更に重量増えるから、一度別のところにおいて…となってしまう。 上谷さんにやってもらった。 こういうとき男の子バイトも欲しいかもしれない。 ただレディースもおいている店だから、どうしても女の子バイトを求めてしまう。
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