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「男女間の様々な憂い事はね、その本質がなんなのかを見極められたら、大体は解決するのよ。自分の気持ち、相手の気持ち、時に第三者の気持ち。だから、あの女の本心を知る必要があるの。『彼を知り己を知れば百戦あやうからず』ってね!」
話すうちに力が入り、最後の方はグッと拳を握りしめて熱弁する沙羅さん。
そ、そこまであたしのことを心配してくれて……。
沙羅さんの熱い想いに、あたしの目頭が熱くなる。
「沙羅さん!あたし、頑張ります!お客さん役、完璧にやり遂げて、タニマ先生の本心をしっかりと探ります!!」
「その意気よ、りおちゃん!一緒に頑張りましょう!」
「はいっ」
ヒシッと手と手を握り合い、あたしと沙羅さんは力強く頷いた。
「……もしもーし」
シンさんの冷めた声が衝立越しに聞こえる。
「盛り上がってるところ悪いけど、ほんとに時間ないから説明続けるね」
なんてクールな態度。
衝立のこちら側とあちら側で温度差がすごい。
「で、邪魔が入らないようにうちの店、今日は特別に小一時間貸し切りにしてんの。だけどそれをその女に知られたらまずいでしょ。だから沙羅ちゃんがサクラとして、客のふりして座っててもらおうと思ったんだわ。んで、沙羅ちゃんの相手を大樹がして、2人で俺らの話を聞いていてもらおうってスタイルが当初の作戦」
「だけどりおちゃんとバッタリ会って、急きょ作戦変更を思い付いたの。りおちゃんが私がやるはずだったお客さん役、大ちゃんがりおちゃんの接客役。そして私は、たまたま偶然客として来店して、タニマちゃんの存在に気づいて、ちゃっかり同席してシンちゃんと一緒に探りを入れる役回りってわけ」
どう?
完璧でしょ?
と、自信に満ち溢れた顔で言い放つ沙羅さん。
毎回思うけど、沙羅さんの行動力には感服する。
昨日の今日で計画を練り実行に移すなんて、ほんとにすごいとしか言いようがない。
「完璧ですね沙羅さん!」
称賛の拍手を送りながら沙羅さんを見上げる。
沙羅さんは満更でもなさそうに微笑んでいる。
「……お前ら、楽しんでるだろ」
深いため息と共に、先生の低い声が聞こえる。
あ、これ、ちょっと呆れてるヤツだ。
だけど、文句は言いつつ諦めている、そういう声だ。
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